脳内のメカニズム
最近は、うつ状態のときには脳がどのような状態になっているかが、少しずつ わかってきました
神経伝達物質の働き
脳の中は、神経がそれこそ網の目のように張りめぐらされています
神経伝達物質とは
私たちの脳の中は、神経がそれこそ網の目のように張りめぐらされています。感情や思考、意欲などは、その神経の働きで生まれてきます。
うつ病の症状は、このような感情や思考、意欲などの機能に障害があるとみられるところから、脳の活動になんらかの不都合が起こっていると考えられています。
こうしたことから、脳内における原因究明のための研究がいろいろな角度から進められていますが、中でも神経伝達物質との関係が強く影響されているという説が有力です。
脳の中の神経といっても、それは1本ずつ長く続いているものではなく、神経細胞が連結してできています。しかも連結部分はくつついているのではなく、シナプス間隙と呼ばれるすき問があります。情報を伝達するときには、そのすき問にある情報伝達物質が働くことで、神経細胞から次の神経細胞へと、スムーズに伝わっていくのです。
神経伝達物質というのは、神経細胞の末端からシナプス間隙に放出され、次の神経細胞にある受容体に刺激を与えることで、情報の伝達を行う化学物質のことです。
これらの神経伝達物質は、次の神経細胞への伝達の役割を終えたあと、またシナプス間隙に放出されます。そして元の神経細胞に再びとり込まれ、次の利用に備えるというようなしくみになっています。
この神経伝達物質はさまざまなものが発見されています。たとえばセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンなどです。それぞれが、異なる情報を運ぶ役目をになつているのです。「セロトニン」は、脳内をはじめ、消化管や血小板など体内に広く分布しています。脳内では体温調節、睡眠、感情、記憶、食欲などの機能に関与しているといわれます。
「ノルアドレナリン」は副腎から分泌される交感神経系の物質で、心拍を促進して血圧を上げる働きなどがあります。ストレスと関係が深く、危険を感じたときなどは交感神経の働きを高め、不安や恐怖などの精神状態を引き起こすとされています。
また、「ドーパミン」は運動の調節をはじめ、感情や認知の機能に重要な働きをしています。たとえばパーキンソン病では、ドーパミンが不足するために、運動の司令系統がうまく働かず、手足のふるえなどが起こります。
脳内の「アセチルコリン」は、記憶など知的活動と関係しているといわれます。
これらの神経伝達物質がうまくバランスがとれていることで、精神面の活動がスムーズに行われることになります。
うつ病と深く関係するセロトニンとノルアドレナリン
このように神経伝達物質にはいくつかの種類があります。実は、うつ病の人の脳の状態を調べてみると、これらの神経伝達物質のうち、セロトニンとノルアドレナリンの量が極端に減少していることがわかっています。
このことから、うつ状態やうつ病は、セロトニンとノルアドレナリンが不足したり、その働きが低下したために、脳内の情報伝達がうまくいかずに起きてしまうと考えられるわけです。
現に、うつ痛の治療に使われる抗うつ薬は、シナプス間隙におけるそれらの濃度を高める作用をするものです。次の神経細胞へ伝達する役目を終えたセロトニンやノルアドレナリンは、またシナプス間隙に放出され、元の神経細胞に吸収されます。これを再取り込みといいますが、抗うつ薬はその再取り込みを抑えることで、シナプス間隙におけるセロトニンやノルアドレナリンの濃度を高める作用をするわけです。
ただし、うつ病と脳内におけるメカニズムについては、まだまだわからないことも多く、今後の研究の成果が待たれるところです。
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