血圧を下げるための運動

血圧をさげるために重要な食事とそして同じように大切な運動です。ただし血圧が高い場合には激しい運動よりは心拍があまりあがらない「ウォーキング」などがより効果的です。

ゆったり散歩が効果絶大

ゆったり散歩で高い血圧を下げる

私の家系はみんな血圧が高く、父も母も高血圧が原因の病気で亡くなっています。私も血圧が高いので、「ゆったり散歩」をするなど、生活習慣の改善を心がけています。ただし、私が「高血圧」を研究対象に選んだのは、そのためではありません。医学部を卒業し、地元の病院で初期研修を受けたのがきっかけでした。

当時、地元は脳卒中の多発地帯で、脳卒中で倒れた急患が 次々と運ばれてきました。急患の多くの方は、40~50歳の働き盛りです。原因は、明らかに高血圧でした。その地区では、最大血圧が250mmHG、最小血圧が150mmHGといった高血圧もざらで、脳出血を起こす人が後を絶たなかったのです。

しかし、医師になりたての42年前には、降圧剤がほとんどなく、薬で治すことができませんでした。そのため、脳卒中から患者さんを救うには予防以外にないだろうと考え、高血圧の予防医学を生涯の仕事にしようと決意したのです。 当時からわかっていたのは、食塩と高血圧の関係です。地元の人は、1日に25~30gもの食塩を摂取していました。行政や医療機関が減塩運動を行った結果、今では10~12gくらいになりましたが、まだまだ多めです。

このように、高血圧予防として、第一に気をつけたいのは食塩ですが、そのほかタバコやお酒も要因となります。タバコは、全身の虚血をもたらします。虚血とは、血液が不足することです。体の隅々まで血液を行き渡らせるために、当然、血圧が上がります。 お酒は、少量であれば「百薬の長」となり、飲んだすぐは血管が拡張して血圧が下がります。しかし、飲みすぎると翌朝血圧が上昇してしまいます。

実際、脳出血は、明け方の時問帯に最も多く発生するのです。かつて東北の人たちは、塩辛い漬物などを食べながら、お酒をたくさん飲む習慣がありました。そのため、高血圧、さらには脳卒中が多かったのだと考えられます。

体重が減らなくても降圧効果が期待できる

当時は、血圧を下げるために4種類の降圧剤を飲み、同時に、生活習慣の改善も始めました。まず、タバコをやめることにしました。とはいえ、禁煙は簡単ではありません。私の場合、「家と職場では吸わない」と決めました。最近ではお店や路上でも吸えない場所がふえたので、喫煙本数が激減しました。

今では、宴会などで1本もらって吸う程度で、禁煙は9割 成功しています。このことも血圧の降下に役立ったと思います。減量をすすめる立場にありながら自分自身の腹囲は増大し、いつの間にか90cmになっていました。肥満も高血圧を助長しま す。肥満になると、血圧を上げるホルモンを分泌されるようになるからです。

そこで運動も心がけるようにしました。私は若いころから運動経験がなく、腰痛持ちなので、ハードな運動はできません。そのため、家から職場の大学までの4kgを1時間かけて、毎日ゆっくり歩いています。運動は、続けるうちに習慣化します。ですから、何かの都合で歩けない日があると、「気持ちが悪い」と感じるようになるのです。

雨の日も傘をさして歩きますし、休みの日はルートを変えて家の周りをゆったり散歩しています。私が行っている緩いウォーキングでは、体重がへることはありません。しかし、減量効果がなくても、運動をするメリットは大いにあります。

運動によって体重がへらないのは、筋肉がふえるためです。筋肉がふえると、筋肉を養う血 管量も増加します。また、これが運動によって拡張します。さらに、運動すると、汗や尿から体内の塩分を排出することができます。この2点だけでも、血圧降下に役立つわけです。運動を続けたおかげか、今では降圧剤を2種類にへらすことができ、最大血圧が110mmHG 前後、最小血圧が70mmHG前後で安定しています。

降圧剤は一度飲み始めるとへらせないと思っている人が多いようですが、そんなことはありません。生活習慣を少し変えることで減薬は可能です。また、高血圧の早期発見のために、家庭で血圧を測ることも大切です。医療期間で測定すると、緊張して実際より高くなることが多いので、家庭での血圧測定が大事になります。起床後1時間以内と寝る前、1日2回測りましょう。

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