血圧が高い値を示しているということについて正しい知識が大切
脳の病気から心臓の病気まで大事な血管について
血圧が高いということに隠れている真実が重要
血圧が高い値を示すのには意味があります。必要だから上がっているという解釈もできます。特に合併症がなければまずは、生活習慣、食習慣の改善で血圧を改善します。この時点で本気で取り組まないと大変なことになります。
重労働から解放され高血圧患者が激減
現代では信じられませんが、昭和60年代、それまで180mmHGとされてきた正常血圧の上限が、160mmgHGに引き下げられました。
耳を疑うかもしれませんが、こうなった理由は、交感神経優位型から副交感神経優位型の社会に変わり、高血圧症患者が激減したためです。
交感神経優位型とは、過酷な肉体労働の社会です。瞬発力が求められ、寒さなど過酷なストレスを強いられる重労働には、解糖系エネルギーが必要です。解糖系とは、人体にあるエネルギールギ一工場の1つで、瞬発力を生むのに優れています。
その解糖系を働かせるのに、昔の日本人は、どんぶり飯を何杯もお代わりして大量の糖質を摂取し、塩辛い漬物やみそ汁でたっぷり塩分をとっていました。こうして血圧を上げることで交感神経を優位にし、過酷な重労働を乗り切ったのです。
このため、180mmHG以上の血圧で破綻を来すケースが多く、当時、医学が定めた正常血圧の上限180 mHgは、妥当な数値だったといえます。ところが、昭和30年代後半から、あらゆる分野で機械化が進み、それほど血圧を上げなくても労働が成り立つ、副交感神経優位型の社会への移行が始まりました。つまり、重労働から解放された結果、体が欲する糖質や塩分の必要量も減り、180mmHGを超える高血圧症患者が激減したのです。
そこで高血圧学会は、正常値を160mmHG以下に引き下げました。その後も、技術の進歩や工場の海外移転などで、肉体労働が激減し、さらに副交感神経優位型の社会が進みました。 そして、平成に入ってから、その上限を140mmHGへと引き下げることで、現在に至る高血圧症患者の急増現象を生んだのです。
実際、高血圧で相談してくる人の大半は、140~150mmHG台に集中しています。その相談内容も、「体調は悪くないのに、なぜ降圧剤の服用をしなくてはならないのか」「降圧剤を飲んだら、かえって体調が悪化した。薬の副作用ではないのか」の2点に絞られます。
相談者は皆、社会でバリバリ活躍し、それなりにストレスを抱えているため、血圧も高めに維持されていることがわかります。体調も悪くないので、それは自律神経が持ち前の調整力を発揮しているといえるのです。 この場合、無理に血圧を下げる必要はありません。気になるなら、ストレスをへらすように生き方を見直せばよいのです。 今、危機感を持つべきは、平均値から求めた一律の指標で、高血圧症患者というレッテルをはられ、不要な治療にひきずり込まれている現実です。
正常値で比較すれば、わずか30~40年問で日本人の血圧は40mmHGも下がっているのに、降圧剤の売り上げは、なぜか右肩上がりに伸びているのです。
その矛盾に気づき、不要な治療から積極的に脱却し、健康を守ることが急務といえます。降圧剤の多くは、血流をおさえて血圧を下げるものです。必要があって上がっている血圧を薬で無理に下げると、体はたちまち血流不足となって、健康を悪化させかねないのです。
顔色をよく見て健康かどうかを判断する
その弊害を真っ先に受けるのが、血液を最も必要とする脳です。140~150mmHGの血圧で元気な人が、薬で無理に120mmHGくらいに下げることで、うつ、物忘れ、めまい、頭痛、肩こり、耳鳴り、難聴、目のかすみなどの症状が出てくるケースが多いのです。
つまり、血圧150 mHgの人は、血管に150 mHgの圧力をかけないと、脳まで血液が行き渡らない状態なのです。血圧は多少高くても、顔色がよく脳の血流も良好ならば、健康上の問題はありません。
こうした独特な体調不良が降圧剤の副作用であることに気づき、早期に脱却しようとする人が50~60代の中で見られます。それに対して、70代以降の人は老化と降圧剤による健康被害が区別できず、不要な治療を許している現状もあるのです。 こうして降圧剤の服用が長期に及ぶことで待ちかまえる、さらなる健康被害が深刻化しているのも事実なのです。