自然に逆らわずに生きる
家も土でできていて、家具などはなく土間で寝る
生活習慣病、成人病は皆無
母乳がでない女性もいない
自然の中で生きる大切さとそれを受け入れる
ペルーには、かつて300年の隆盛をきわめたインカ帝国の遺跡が多く見られ、謎を包んだまま今も眠っています。
その中のひとつに、カミソリの刃も通らないと言われるサクサイワマンの石組みがあります。これは3400 mの高地のクスコ市で、かつてのインカの首都にあり、今も残るインカの太陽の祭りの広場となっています。インカ帝国はスペイン人のピサロに一瞬にしてだまし討ちにされ滅ぼされましたが、インカは伝える文字を残さなかったのです。すべてが謎のまま神秘に包まれ眠っています。見事な石垣も、今の技術をもってしてもセメントを使わずにどうしてできたのかわからないと言います。古人の知恵の偉大さに、ただただ驚嘆するばかりです。
またマチュピチエの遺跡は、2400 mのアンデスの峻厳な山の中にある要塞都市です。天然の要塞につくられたこの町は、石垣で段々畑ができ、5千人の食程をまかなえる農地を山中につくつています。都市地区は太陽の神殿、居住、浴室、日時計などの跡が石組みだけ残されています。水道の設備もつくられている。
この空中都市がいつ誰の手で建設され、住民達もどこに消えたのか、千古の謎となって眠っています。この厳しい山の中にどうしてこれだけの石垣を積み、文化都市をつくれたのか、石垣を見るだけで驚き、自然に生きた古人の知恵と直感力に、感動するばかりでした。
このマチュピチュは、三方が断崖になっている山頂につくられた天然の要塞です。遺跡は1911年アメリカのエール大学のハイラム・ビンガム教授が偶然発見しました。以来この遺跡のために街ができ、世界中からの見物客でにぎわっています。このクスコ地方を中心としたインカの住民インディオの主食は、トウモロコシとジヤガイモです。味つけにはトウガラシや香りの強い野草を使い、トマトと一緒にすりつぶして食べます。干した野菜を煎じたり飲んだりする原始的な生活で、文明国の人間から見ると実に貧しい生活です。
家も土でできていて、家具などはなく土間に寝ます。成人病などはごく少なく、母乳の出ない母親はここでもほとんど見られないそうです。
奇妙なことに、これが都市生活をして口ざわりの良いおいしいものを食べだすと、食べすぎてしまい、口角炎、結核、心臓病といった病気が増えてくるのです。集落で貧しく自給自足しているインディオのほうが健康でおおらかだと言います。
メキシコのインディオの調査をされた共立女子大学の教授も、同じようなことを言っておられます。
開拓時代に、トウモロコシを主食にしていたアメリカ人にベラグラ(黒皮病)という病気が多発しました。ところが、同じトウモロコシを主食にしているインディオにはまったくない。なぜかと言うと、インディオは完熟したかたくしまったものを食べ、甘くおいしい未熟のものは食べないからです。
完熟したものは、未熟なものに比べてたんぱく質が数倍も多く、さらにベラグラを防ぐトリプトファンが実の中には十分に含まれています。そればかりでなく、胚芽がしっかり育って、その中にビタミンEをはじめビタミンB群やカルシウム、酵素が多く、次の世代を養うミネラル、ビタミンなど、多くの微量成分が含まれているのです。すばらしい自然の思いやりと親切がここにもありました。
インディオは、大地とともに素直に生きて、この自然の教訓を感覚で身につけていたのです。
例えば大豆は栄養価の高いもので、日本はもちろんのこと、世界の長寿者が好んで食べている食品です。ところが、大豆が熟す前の青い状態にある枝豆は、大豆の10分の1もないのです。我々がおいしいと食べている食べものの多くは、加工しすぎであることを、このインディオの生活から考えさせられました。
穀類をわざわざ精白したり、玄米を白米にしたり、小麦の外の皮であるふすまをはいで真白くした小麦粉を食べたり、添加物を利用したり… 。おいしいと食べているもののほとんどが、自然から遠くなってしまっています。
現代人の体にたまった老廃物や毒素を体外に排出する - 快腸を維持するための玄米
だからと言って、インディオの食事や生活が全面的に良いと言うのではありません。彼らのような生活を我々はできませんが、今の日本の中に失われている大事なものを教えてくれます。