手を温めると血圧が下がる

手を温めると血圧が下がる<

冷えは放置していると慢性化してしまう

鍼灸院では、体を温めることを重視した治療を行っています。冷えのある部分は血行が悪くなり、筋肉も硬くなっているので、十分な治療効果が得られません。

さらに、低体温だと免疫力(病気に対する抵抗力)も低下してしまいます。患者さんたちにも、日常生活で「体を冷やさないこと」「冷えたらすぐに温めること」を心掛けるよう言っています。体の中でも、特に「5つの首」 (首、両手首、両足首)を冷やさないことが肝心です。

体の冷えは、洋服に付いたシミのようなもの。付いたその場で処置すればきれいに取れますが、放っておくと布に染み込んで、なかなか取れなくなります。体の冷えも同じで、放置すると体の奥深くにまで染み込んで、冷えが慢性化してしまい、取れにくくなるのです。

しかし、いくら体を冷やさないように気を付けていても、寒い場所で長時問過ごした後などは、体が芯から冷えてしまうことがあります。すぐに体を温めたい。家に帰ってからお風呂に 入るのでは手遅れで、このままだと風邪をひいてしまう。 そんな緊急事態のとき、洗面台や流しで手軽にできるのが、「手浴・ひじ浴」です。手浴・ひじ浴のやり方はとても簡単。

まず、食器の洗いおけや洗面器に、40~42℃くらいの熟めのお湯を入れます。そこに、両手を指先から手首の上5cmくらいまで浸します。そのまま5分ほどじっとしていると、体がじんわりと温かくなってきます。手が温まったら、次に、両ひじをお湯に浸します。こうやって手浴→ひじ浴の順に各5分ずつ交互に行うと、全身が汗ばむ ほど温まり、冷えがすっかり取れてしまいます。

手浴だけではなく、ひじ浴も行うことがポイントです。自分ではなかなか気付きませんが、体が冷えているときは、ひじから二の腕の部分も冷たくなっています。この部分が冷えると、風邪をひきやすいのです。

実際に手浴・ひじ浴の効果を実感した出来事があります。数年前に、春先に競技場でサッカーを観戦したときのことです。薄手のジャケット1枚で、4時問以上も屋外で立ちっ放しだった私の体は、芯までガンガンに冷え切ってしまいました。 試合後、「このままだと高熱が出てしまう」と不安を抱きながら、急いで戻りました。

そして、流しに直行し、洗いおけに熟めのお湯を入れて手浴・ひじ浴をしたのです。15分ほどたったころ、体が温まってきて、おでこから汗がじんわりと出てきました。すると、まるでなだれが起こったか のように、体から一気に冷えが出ていったのです。体はポカポカ。まるで春が来たかのように温かくなっていったのです。

その後、家に帰ってお風呂でしっかり温まり、翌日は熟も出ず、カゼもひかずに過ごすことができました。手浴・ひじ浴をせず、家で入浴するまで冷えを放置していたら、熱を出して寝込んでいたでしょう。

ストレスを軽減し、頭痛や不眠にも効果的

手浴・ひじ浴は、体が急に冷えてしまったときの応急処置のほか、慢性の冷え症や、肩こり・首こり、目の疲れ、体のだるさなどにも効果的です。首や肩がこったとき、こりのある部分をもんでほぐそうとする人が多いですが、こっている筋肉をもむだけでは効果が穿いのです

首や肩につながる経絡(生命エネルギーである気の通り道)は、手から腕、肩、首へと流れています。したがって、まずは経絡の末端に当たる手を温めることが大切です。末端を温めて循環をよくした上で患部をもむと、筋肉のこりがほぐれやすいのです。 また、手のひらの中央には、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経) の調整やストレ ス軽減、頭痛、不眠、慢性疲労などに効果のある合谷というツボがあります。手の甲の、親指と人さし指の付け根の骨が合わさるところにある合谷というツボは、頭痛や眼精疲労のほか、万病に効くツボとされています。

手首の周辺にも、不眠や動悸に効果がある神門や、呼吸器系疾患に有効な太淵などの、重要なツボがたくさんあります。手浴・ひじ浴は、これら手や手首周辺のツボを温めて刺激することができるので、さまざまな効果が期待できるのです。 全身浴や足浴は、体を温めるよい方法ですが、いつでも気軽にできるわけではありません。その点、手浴・ひじ浴は衣服を脱がなくても、外出先でも洗面所や流しで手軽にできるのが大きなメリットです。体の冷えを即効で解決できる方法として、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

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